【セッションレポート】小売業年次イベントである「NRF 2025: Retail’s Big Show」の基調講演に参加しました #NRF #NRF2025

【セッションレポート】小売業年次イベントである「NRF 2025: Retail’s Big Show」の基調講演に参加しました #NRF #NRF2025

Clock Icon2025.01.13

NRF 2025: Retail’s Big Showって何?

こんにちは、濱野です。NRF 2025: Retail's Big Showの会場よりお送りします。
NRFは"National Retail Federation"=「全米小売業協会」が主催する世界最大規模の小売業界に関する年次の展示会(元は決起集会)となります。

1911年に始まり、今年は約40,000人が世界中からイベント会場のニューヨークに参加する非常に規模の大きいイベントで、年始に昨年を振り返ると同時に、今年をどのように捉えているのか、多数のセッションを通じて視点やアイディアが語られます。言わば今年の全米並びに世界の小売業を占うイベントと言っても良いかもしれません。

なぜクラスメソッドがNRF 2025に参加するの?

クラスメソッドではAWSの技術的なご支援をする一方、支援先のお客様から単純な技術支援ではないご相談をいただくことがあり、業界の知識や経験が必要な場合が少なくありません。そのため、特にご相談が多い産業分野は、その産業に精通したチーム、例えばゲーム業界や小売業界向けのチームを作っています。

小売業の専門知識や経験を深めるためにこのようなイベントに定期的に参加し、コンサルティングや勉強会の形でその知見を生かすようにしています。もしご興味あればご相談ください。

セッション概要

さて、今回参加したセッションの概要になります。

NRF chairman’s opening and welcome: Game-changing times for the retail industry

NRF Chairman and President and CEO of Walmart U.S., John Furner, welcomes Big Show attendees and provides a look at the state of the retail industry. What we're living through now aren't just changes, they're a revolution, and AI in particular is changing how business gets done. Hear John discuss this in-depth with tech industry leader Azita Martin from NVIDIA, which, like Walmart, is at the forefront of how retailers are using AI to elevate customer experiences, empower employees, and drive greater operational efficiencies. Together, they'll explore how AI is enabling smarter, more agile operations and redefining what's possible for consumers and businesses alike.

日本語訳

全米小売業協会(NRF)会長による開会の辞と歓迎:小売業界における革新的な転換期

全米小売業協会(NRF)会長兼ウォルマートU.S.の社長兼CEO、ジョン・ファーナーが、ビッグショーの参加者を歓迎し、小売業界の現状について展望を示します。私たちが現在経験しているのは単なる変化ではなく、革命であり、特にAIがビジネスの進め方を変えています。ジョン・ファーナーが、ウォルマートと同様に、小売業者のAI活用による顧客体験の向上、従業員のエンパワーメント、業務効率の改善の最前線にいるNVIDIAのテクノロジー業界リーダー、アジタ・マーティンと共に、この話題について詳しく語ります。二人は、AIがどのようにしてよりスマートで俊敏な業務を可能にし、消費者とビジネスの双方にとって可能性を再定義しているかについて探ります。

本セッションは、いくつかある"Keynote Session"の中で、一番最初に開催されるものであり、NRFが今年最も注目する内容を述べていると言っても過言ではないかと思います。

その中で、NVIDIAの方と共に登壇し、(生成)AIの活用を前面に据えた技術よりの話から始めるというのは、小売業にとって(生成)AIの活用(≠PoC)を重要視していることの表れであると思います。

登壇者

  • Azita Martin - Vice President and General Manager, Retail & CPG, NVIDIA
  • John Furner - President and CEO, Walmart U.S.

セッション内容

AIの代名詞となったNVIDIA

John Furnerさんより、2024年の振り返りと2025年に向けた抱負が語られた後、125を超える出展者がAIが将来ビジネスに与える方法をデモすることに触れ、NVIDIAのAzita Martinさんを紹介されました。

Azitaさんは自身のキャリアを振り返り、NVIDIAへの参画はそれまでの彼女の専門が航空宇宙産業であったことからすると、大きなチャレンジであったことが語られ、6年半の在籍の間にNVIDIAはGPUハードウェアからAIの代名詞に変わったことが語られました。

NVIDIAとパートナー

NVIDIAは、単にGPUをハードウェアとして提供するだけの存在ではなく、クラウドやOEMソリューションを手がけるプロバイダー(パートナー)と協力し、AIアプリケーション開発者を支援するアクセラレーテッドコンピューティングプラットフォームであることが語られ、その具体例として、以下のビデオ(類似のもの)が流されました。

Reinventing Retail with AI | I AM AI
https://www.youtube.com/watch?v=xLnnZMmEHfM

小売業でAIを活用する例として3つを挙げていました。

  • (WPP社)NVIDIA PicassoやStable Diffusionなどの生成AIモデルを用いて3D資産を活用してクリエイティブを高速に作る
  • (Walmart社)大量のデータを取り込み、週単位で単品x店舗の(販売に関する)組み合わせを予測し、精度向上を行う(精度1%向上でも効果あり)
  • (Lowe's社)1,700店舗のデジタルツイン(仮想店舗空間)を作成し、顧客の買い周りやレイアウト変更をシミュレート、最終的に売上を向上させる方法を最適化する

パーソナライゼーション

改善余地のある課題の一つとして、パーソナライゼーションが挙げられました。
これに対し、生成AIの登場によって検索が一変し、商品情報の強化、推論などを活用できるようになり、モバイルアプリを通じてよりパーソナライズされた体験を提供し、顧客が探しているものを正確に見つけることができるようになると語られました。
(WalmartにおけるShopping Assistantなど)

機械学習から生成AIへのシフト

John Furnerさんより、長い間AIと呼んでいた機械学習から生成AIへのシフトについての説明を希望されました。
Azita Martinさんより、深層学習モデルのひとつであるTransformerのアーキテクチャがGPUコンピューティングを利用し、大量データを学習したことで、生成AIの基盤となる大規模言語モデル(LLM)が生まれたことが語られました。
また、特定のビジネスドメイン固有のデータ、文書、ビデオを学習させた「AIエージェント」が従業員の生産性を大幅に向上させること、具体例としてショッピングアシスタント(カスタマーサービス)の説明をされました。

サプライチェーンでの生成AI活用

生成AI活用のサプライチェーン領域における先進的な例として、物の重さ、アイテムの量などを理解する物理AIについて触れられました。
その具体例としては、以下のような例が挙げられました。

  • 店舗または配送センターでの様々なレイアウトをシミュレートすることでレイアウトに変更を加える前に運用効率を最適化する
  • 倉庫や配送センターのデジタルツインを作成し、仮想空間上での物理モデルに従ったAIエージェントのソフトウェアと繰り返し学習によって、不測の事故がリアル空間で起きても、それが反映された仮想空間上で最適ルートを再検索することで、リアル空間でのルート変更を容易にする(具体的には以下のような動画で説明)

Fusing Real-Time AI With Digital Twins
https://www.youtube.com/watch?v=l5M4sqaRd6w

NVIDIAが今後貢献できそうなこと

NVIDIAが2025年1月上旬に以下の3点を発表したと説明されました。

  • "Mega"(物理AI)の提供。Megaは産業用ロボット群デジタルツインを構築するためのOmniverse Blueprint。
  • エージェントAIのグループ化。特にユニークなのは他のエージェントにタスクを実行するよう指示することが可能な点。
  • Webを開始するAIエージェント。例えば予想される天候に基づいて追加のショベルやバッテリーを追加するなどの対応が可能。

考察

基調講演において、re:Invent 2024のみならず、NRF 2025: Retail’s Big Showでも生成AIは大きく取り上げられ、また、PoCではなく、実際にどう生かすかが多々語られたのが印象的でした。

実際にAIエージェントの力を得て、リアル空間も含めて生成AIを社会実装する時がそこまで(既に?)来ているように感じます。

生成AIは単に技術的に詳しい/興味のある人のためのものではなく、非エンジニアや小売業の担当者も含めて使い始める必要があると実感しました。

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